2019/09/09

最近気になった情報など

西野 宏

世銀のブログに倣うわけでもないですが、気になった文献や記事、その他さまざまな情報について定期的に共有していきたいと思います。

 

ナッジのScalability

ナッジを活用したある取組について、小規模では有効性が確認できていたもののより大きな規模で実施した際には有効性が確認できなかったという検証結果を示した論文です。大規模の実施体制を持つ実施組織は、裨益者に対する情報が十分でなかったり、裨益者とのコネクションが弱かったりするため、そうした実施環境の違いが異なる結果を生んだ主な要因とされています。

小規模のモデル事業の結果に基づき事業の拡大を図るというケースは少なくありませんが、スケールアップ時に同じ効果が得られるかについてはやはり慎重になる必要があることをこの結果は示しています。大規模での展開を見込む事業に関しては、小規模でモデル事業を行う際にも最初から展開を見据えた取組案(実施体制含む)を検討し、その検証を行うことが重要になると思います。

 

RCTと準実験の比較

ランダム化比較試験(RCT)は効果検証を行う上で理想的なデザインであると言われていますが、同じ介入についてRCTとそうではないデザインで検証を行った時にはどの程度結果が変わってくるのでしょうか。この研究では、RCTによる分析結果と、介入群だけのデータを用いた分断時系列デザイン(Interrupted Time Series: ITS)による分析結果の比較を行っています(不勉強ながら、こうした同じデータを用いて別のデザインによる分析結果の比較を行うことをWithin-study comparisonと呼ぶそうです)。

その結果、RCTを用いた分析では統計的に有意なポジティブな効果が確認された一方、ITSによる分析では統計的に有意なネガティブな効果が確認されたとのこと。施策の対象者のデータしかないという場合は実務上少なくなく、ITSはそうしたケースにおける数少ないオプションの一つですが、係数や標準誤差が多少変わるだけでなく符号が反対に(しかも統計的に有意に)なってしまうというのは中々に厳しい気がします(もちろんあくまでこのケースでは、ですが)。

いずれにせよ、理想的な方法が取れない場合でも、理想的な状況下での結果とどれだけ乖離し得るか、という点を常に念頭に置いておくことは重要だろうと思います。

 

文部科学省の委託事業「デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」

どのような評価デザインを用いて検証するのかはわかりませんが、「応募多数の場合は先着」を「応募多数の場合は抽選」とし、応募要件・募集概要の「…アンケート調査にご協力いただきます」という点に「実際の教科書貸与の有無に関わらず」と一言追記するだけで、かなり筋の良い効果検証ができると思います。

事業の実施時に簡単な工夫を組み込むだけで、効果検証がはるかに容易になるケースはとても多いと日頃から感じています。

 

一橋大学の医療政策・経済研究センターが実施する研修プログラム

講義では「「科学的な根拠に基づいた政策立案(EBPM: Evidence-based Policy Making)」を軸に、データに基づいた医療・介護に関わる政策・経営の実態把握と分析、効率化に向けた手法等」が扱われるそうです。

 

Quantitative Social ScienceのSTATA版

今井先生のQuantitative Social Science(訳書は社会科学のためのデータ分析入門)のSTATA版が出るそうです。Rの使用を前提に書かれたこの本ですが、このSTATA版があれば、と思ったのは私だけではないと思います。発刊はまだ先の2020年4月とのことですが、期待です。

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